思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『創作彼女の恋愛公式』感想

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本当に惜しい作品だな、そう思った。全体の展開、つまるところプロットはかなり良いものになっていたんじゃないかとも思う。事実として文章自体は面白いとは言えなかったために序盤から引き込まれるということはなかったものの、2話以降は特にダレることなく安定して読み進められた。また、その他の要素に関しても特に問題を感じることはなく、そちらについても上々。特にキャラクターのヴィジュアルは担当原画家有葉さんという方を今回初めて知ることとなったが、すぐにファンになってしまった。そしてキャラクターを彩る魂も、十分魅力的だった。というのも、プレイ前は逢桜が一番好きだったのだが、いざ始めると桐葉に大きな魅力を感じた。

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当然、最初に惹かれたのは顔だった。今まで遠目で見ていたから気付かなかっただけで、PCの画面で見るとひっじょうに好みの見た目をしていた。加えてクールっぽさを醸しつつも単なるお嬢様(笑)ではなくちゃんと友人的魅力をも持ち合わせている。これで身長が主人公より高かったらなぁ……というのは既にマイノリティ性癖であるとわかっているのでわがままというものなのだろうが。というかそもそも名前からして強い。桐←強い。葉←強い。桐葉←超強い。なんなら今年の好きなヒロインランキングを根本から揺るがす程度には好き。具体的に言うと折原氷狐>月見坂桐葉>星都チエミって感じに。もともと星都チエミは顔だけでここまで来た感じのヒロインなので顔よし中身よしのヒロインいたら簡単ではないが別に牙城を崩すことが難しいというわけでもないのでね。

とはいえシナリオ的に見れば逢桜に想いが寄ってしまうのはご愛敬。しかし各ヒロインのシナリオも(逢桜に比べると見劣りするものの)良かった。特に桐葉はもっと過程をしっかり描いていれば逢桜ルートにも劣らないものができていたとすら感じている。

で、初めに言った「プロットは良かったのではないか」の真意であるが、これは殆どのシナリオ展開が非常に軽かったというもの。問題発生から問題解決にかけてのプロセスがあまりに短い。というよりかは、心情描写が致命的に足りていないため登場人物の心情がコロコロと変わっているように見えて展開それ自体に説得力が欠けてしまっているとした方が正しいだろうか。ただこれを踏まえてもプレイしていて楽しいと感じたので、本当に惜しいと思わざるを得ない。

これで逢桜ルートでは死別(かどうかは定かではないが)END。本作において涙を誘われた場面は少なくないが、その殆どが創作に命を燃やす登場人物たちの心意気に惚れてのことだった。故にラストで号泣ということには至らなかった。ただ、最後の解釈がどちらに別れようと本作がハッピーエンドの物語であることは明白。何処かすっきりとした面持ちで未来を目指す寿季の背中を見て、どうして涙を流せようか。

……ラストの解釈、本当にどちらなのか、未だ迷っている。やはりあそこで生存可能性を示唆したのは悪手だったのではないかと思わずにはいられない。

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正直ここら辺の文章だけ見れば亡くなったという解釈に傾きはするのだが、やはり生きているという線も捨てきれず、何より先刻の生存可能性の示唆がその考えを支持する要因になっている。だからこそ、敢えて個人的な好みの話を言えば、逢桜には死んでいてほしいと願う。無為を成してメタ虚構の礎となった姿が、最も美しいと感じるから。逢桜とともに願った未来を背負い、これからを歩む寿季の姿が、一番かっこいいもの。

 

 

点数:73/100 文章4/10 味:酸味、苦味