思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『dROSEra ~レディバッドエンドの初恋~』感想

紫音さん、綺麗だ……。

ということでdROSEraです。本作はHOOK系列の新ブランドTillyの処女作ということで、まぁそれなりに話題になっており、かくいう私もかなり注目している作品だった。というのも、まずメインヒロインのヴィジュアルが最強。白く少し大きめでかつゆったりとしたリボンをつけた服、全体で見ても少しゆとりを感じさせるデザインは非常にかわいらしく映る。それでいてこの髪色、正直なところ私は銀髪と白髪とではかなり差があるくらいには白髪の方が好きなのだが、今回ばかりは実に英断であったと感じる。単純な話、恐らくこのキャラクター、紫音さんには服の色合い、デザイン含めて銀髪の方が似合う。それに彼女自身のミステリアスさ加減もよく輝かせていると思う。

というような具合で、キャラクターについてかなり刺さった。この時点で勝ち確だろと思っていたが、本作のサブタイトル、『レディバッドエンドの初恋』というもの。これだけでやれバッドエンドだハッピーエンドだを話すのはなんとなく察しがついていた。これについて、そもそも私は安易なカテゴライズが好きな人種だ。普通のカテゴライズはどちらかというと苦手だ。そして厳密なカテゴライズは嫌いな場合が多い。ただ、この話をする前にはっきりとさせておきたいのが、この厳密という言葉は学術的正しさであるとか、そういった社会的に正しさを一定以上認められた厳密という言葉とは縁遠いものであることを留意していただきたい。これは大衆的な厳密さ、それは厳密であってなおもっとも安易なものであると認識している。

本作において、バッドエンド及びハッピーエンドという言葉は先の大衆的厳密性に則った言葉として安易に使用されているものだった。当然、物語の根幹をなす要素の一つであるから、これなくして本作を語ることなどできないのだが、これがどうにもしつこいほどに感じられてテーマすらもまだうっすらとしか感じられない序盤に関しては少し不快に思えてしまった。

しかしテーマが見えてくればなるほど、面白いテーマだった。敢えて本作をカテゴライズするとすれば物語を利用した恋愛劇、一瞬物語的物語の要素があるとも思ったが、物語という存在が決して外部からはみ出ることがなかったため、そうではないと感じた。本作の物語とは内部に押し込め、人間という究極の内部的存在と融合させる、といったものである。こう変な言葉を使ったが、要するに物語と人の心を並べたというだけの恋愛模様にすぎない。とはいえこの要素で見ても少し人と物語のずれというものはあるが、正直敢えて言及するほどでもないのでスルー。

本作の流れとしては、理想、物語の押し付け合い、それによって進行する。二人は作品中盤あたりからうっすらとすでにお互い惹かれあっているのではないか、そう思える描写は何度もあった。互いの理想がそれを邪魔した。中でも何より重いのが都合の良い関係でいようとした制約、すなわち唇へのキス。他のどの部位へキスをしようとも決して唇だけはと。そのやりきれなさ、もどかしさは作品として短いため感情の育成がままならない中でも確かに感じることができた。

極めつけはラストを飾る選択肢。ここまで二人はバッドを、ハッピーを、押し付け合ってきた。そこで出るのが旅立つ紫音さんへ最後に贈る物語。ハッピーエンドか、バッドエンドか。前者を選ぶということは今までと何一つ変わらず、しかし桜太郎らしさを保ち、きっと幸せな一生であるのだろう。後者を選べば、それは安易に自分を捨てたということにほかならず、実際この選択をすると取り繕ってはいたものの、失望の感情は見えてしまっていた。どちらを選んでも結局紫音というキャラクターに心から落ちるには足りなかった。

だからこそRESTART。正直短い尺でこれをやるのはどうかと思うところもあるが、索引自体は面白いので許容範囲。とはいえこれが現代的なニーズと言われればそれまで、そういう意味で本作はおすすめしやすい作品であると言えるのかもしれない。

このRESTARTを経ることである程度紫音というキャラクターの内面が可視化され、ちょっとしか感情の浄化に繋がるということがあるかもしれないが、それ以上に先述の唇へのキスという行為の重要性、それをこの作品という範囲内でどれだけ重要であるかが再確認できた。そして物語が続いていく。という名のエンド。テーマ的な絡みとして、この演出は実に粋なものであると感じた。どちらのエンドでもない、どちらかに傾いてしまえばそれは対等ではなく、本作において紫音と桜太郎の関係は決して傾いたものではいけなかった。どっちつかずというのは言い換えれば中途半端とも言えてしまうが、その中途半端がもっともよく均衡を保つことのできる結果であったのだと。

 

その他、えっちシーンがとても良かった。特に喘ぎ声に頼らず地の文でエロさを表現されていたことはそれだけで個人的にポイントが高い。まぁ、ヒロインの性質上地の文が疎かであったというだけで手のひらクルーしてたかもしれないのだが。

加えて唇の塗りがひっじょうに良かった。それだけでキャラデザの点数20点加点!w

いやほんとに、これ他のメーカーでも導入してくれないかなぁと思った。本当に唇がえっちだった。これによって紫音というキャラクターのデザインが完成されたものであることが確認できる。

 

 

点数:72/100 文章:6/10 味:甘味、苦味少々、酸味少々