思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『Magical Charming!』感想

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わたしが好きだった頃の角砂糖の作品。前々から良いと聞いていたので、普通に期待して読み進めた。結論から言ってよかったと思う。TRUE以外が少々退屈でダレてしまったのは否めないが、TRUEで巻き返したこと、文章がスッと入ってきて読みやすく、なおかつ日常シーンも面白かったこと。これらの要因で全体として見ても良い出来だったと言える。登場人物もそれぞれキャラが濃く、特にメアリー、ランディ、シャロンの三人は非常にキャラが立っていたように思える。

ただなんというか、作者のジェンダー観はあまりに私のそれと合わず、いらいらする場面は多かった。

 

姫百合√

くそ。ゴミ。ちょっと大人びたかっこいい先輩。しかしふたを開けてみれば男に尽くしたいと考えてる前時代的な価値観を持った非常に残念な子。しまいには主人公のことをあなたと呼ぶ始末。私のことで申し訳ないが、恋人や夫に対する呼称としての「あなた」が反吐が出るほど嫌いだ。ついでに男に尽くしたり、男の好みに合わせようとする芯のない女、こういうのも大嫌いだ。それを前面に押し出したのがこの√。それに加え他の√と比べても面白いと感じた場面が少なかった。

 

秋音√

問題はなかった。特筆すべき点もなかった。

 

諷歌√

お兄ちゃん!

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以上。

 

オリエッタ√

他の√と比べて圧倒的に面白かった。やってることは変わらないが、笑えるような場面が多かった。それだけ。

 

TRUE

この√とそれ以外とじゃ別のゲームやってる、そう思うくらいには情報量が多い。この世界はループしてるだ本当の歴史はこれだと今まで語られなかったことが次々打ち明けられていく。ところで関係ない話なのだが、本作の担当ライターの欄に冬茜トムの文字がひっそりとあった。ひっそりとだったので違うと思ったが、TRUEのストーリー展開があまりに彼らしいと感じた。というのも、先の話の中にループの起点はどこだという問題提起がなされた。これは彼の『アメイジング・グレイス』でも非常に重要視されていた問題だった。またこれまでに出ていた伏線と感じさせないものを伏線とする驚き、これらのことから非常に彼らしいと思った。

そういえば、この√に入るためには他の√をすべて見て、なおかつある程度バッドエンドを見なければならないので、少し面倒。しかしそれが本作の特色であり、またそれが面白いとも感じた。

ずっとこの地を守ってきたイスタリカ、彼女が幸せを享受し、本作は終わりを告げる。詳細は省くが、これに関するストーリー展開があまりに私好みだった。

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全体として、かなり面白かったが、正直雑と思ったところもあった。その一つとして、イスタリカが学校周辺しか語られてないことによるが、結局イスタリカは何なのかという問題。どうも枢密院と呼ばれる政治を行う組織があるようだが、それについても政治を行うとしか語られず、具体的に何なのかは全く謎のままだ。殊イスタリカに関して本作は謎を多く残したまま終わってしまった。国家と呼ばれているが、果たして国家の体をなしているのか、それもまた疑問である。まぁ直接の関わりがないため詳細を省いたのだとは思う。

採点も正直どうするかかなり迷う。一応高いほうにしておくが、もしかすると変わるかも。

点数:69 文章:普通(読みやすい) 味:旨味、甘味。