思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

「初心者向けエロゲ」について考える

初心者向けのエロゲは何かと聞く人たちは、何か目的があって聞くのだろう。出なければ自分の好きな作品を手に取ればいいし、それができないほどおこちゃまでもないだろう。だからこそ、ここではその目的と初心者エロゲーマーとは何かという問いを確定する。

 

 

 

はじめに

初心者向けエロゲは何かという問いは頻繁に見かける。それに対する回答としてゆずソフトやSAGAPLANETSというのも頻繁に見かける。果たしてそれは正しいか。それはわからない。無論こんな問いを投げかけているのだから、否定したい。しかし多くの人が口を揃えて同じ回答をする、その純然たる事実がそれを間違いだと否定できない要因となっている。

では何故彼らはその2社の作品を薦めるのだろうか。第一に、初心者には緩い雰囲気の作品を薦めるべきという風潮があるからだろう。第二に、有名であるから極端な地雷ではない可能性が高いからだろう。実際それは初心者に薦めるにあたって考慮すべき点の一つである。しかしあくまで一つであるにすぎない。忘れがちのようにも思うが、薦めるという行為をするにあたって、最も考慮すべきはその人の嗜好や経験だ。エロゲというものは、その性質上早い段階で出会うということがまずない。故に文章に幼いころから親しんだ人もいれば、そうでない人もいる。後者にとっては単純に文章を読むこと自体苦痛かもしれないし、ましてやそこに難解な設定なんてあったときにはもはやそれまでだ。

率直な言葉で言おう。エロゲは文章を読むといういかにも頭よさげな人が好んでやりそうなことを、そうではない人もやっているのだ。物語というものは決して一つの解釈で終わることはないと思うし、そうであってはならないと思う。ただ、あまりに物語との整合性のないものは解釈などではなく、只の勘違いである。それを彼らは平気でやる。示された物語を理解せず、強引な勘違いへと導く。それでは作品にかかわった人たちが、そしてその作品の本当の良さを知ることができない彼らが、あまりにかわいそうだ。故にこの記事は全国の情緒を解さない馬鹿に送る。故に初心者エロゲーマーとはここに一つの解として本を読む習慣がなく、なおかつ大した読解力もない人たちとする(飽く迄1つの解です。決して喧嘩を売っているわけではないので悪しからず)。

また、逆に言えばそうでない人にはこれから説明することはすべて無視していただいて結構。あなた方に真に伝えるべきはエロゲの入手方法、売っているお店のような、所謂情報をメインに伝えればそれで十分だ。そしてそういった情報については「秋葉原 エロゲ」みたいな感じで調べれば優秀な記事が出る筈なのでそちらを参考に(東京住みなので他の地域のことはしらない)。

 

『ATRI‐My Dear Moments-』

私が初心者向けのエロゲ、と言ってもエロゲではなく全年齢なのだが、として真っ先に候補に挙がるのがこれだ。長くても10時間程度で終わるボリューム、それでいてしっかりと纏まっており、簡潔で分かりやすいストーリー。そして2000円という安価。エロゲに限らず初心者が心配しがちと思われる問題を漏れなくクリアしている。

本作のストーリーについては、いわゆるアンドロイドもの。「人」と「モノ」の壁をどう乗り越えるか、その描写を簡潔ではあるが感情移入できる程度にはよく描けていた。

しかし何と言ってもこの作品には背景をわいっしゅという方が担当しており、おそらく今年発売したノベルゲームの中では最も美しい背景だろうと思われる。非常に素晴らしく、それだけでもこのゲームを買う価値はあるほど。機会があれば他にも彼の担当した背景の作品を触れてみるといいだろう。その例として『さくら、もゆ。』という作品がある。これはストーリーが非常に長く、少なくとも簡単といえるようなシナリオではないため初心者に薦める作品ではないのだが、一応ここで紹介しておく。ある程度作品をプレイしたのちに触れてみるといいだろう。

 

『この大空に、翼を広げて』

実はこの作品はATRIと同じライターがシナリオを担当している。ATRIは値段も考慮して一番に紹介したが、シナリオに関して考えるなら実のところもっと他にある。その一つが本作だ。ATRIと話の方向性は全く違うが、やはり同じライターらしいと感じる部分が多く見られる。

ストーリーは全√を通してグライダーを飛ばすために部活のみんなで協力する青春を描いたというもの。正直小鳥と天音以外の出来はあまりよくない(それでも及第点は超えてる)が、その二人のシナリオがかなり面白い。また、登場人物それぞれキャラが濃く、そういった面でも飽きることなく文章を読み進められる。

 

『金色ラブリッチェ』

別に最初の話はサガプラが悪いとか言ってるわけではなく、ただ脳死的にその二社を薦めることが悪いといっているだけで、実際同社の『はつゆきさくら』は名作であるし、よく初心者向けのエロゲとして紹介されるが、そう進んでおすすめできるような作品ではない。『ナツユメナギサ』も名作であるが、やはり初心者に薦めるには違うと思われる。ちなみにサガプラにはまだたくさん作品があるが、わざわざ取り上げるほどのものはこの三つだけである。他は全て初心者に薦められるようなものでなければ、さして面白くもない。ただキャラは可愛いのでそれを重視しているのなら、買って損はしないだろう。

それで、話を戻すがこの大空に翼を広げてに比べるとキャラの濃さ的に弱いことは認めざるを得ないが、それを考慮しても全く劣るとは思えず、加えて極めてメッセージ性の高い作品だ。初心者には読解力のほかにも抽象的な概念を解釈するということを覚えてほしい。それには本作が非常に有効だと考える。

本作が気に入った場合は、同じライターの『ひこうき雲の向こう側』と『辻堂さんの純愛ロード』をプレイするといいだろう。

 

アメイジング・グレイス

私はこの作品で冬茜トムというライターを知ったのだが、ただただ感服だ。そして今まで彼を知らなかったことを心底恥じた。そう思わせる程度には素晴らしい作品だった。伏線回収があまりに見事。しかし伏線などと言うと少し難解なイメージが湧いてしまうかもしれない。その意識を克服するために本作を紹介する。

本作はその壮大なストーリーを非常に丁寧に解説してくれる。本作を読むにあたって意識してほしいのは、どこがどこと繋がっているかということ。間違っているかもという心配は無用。前述の通り、非常に丁寧に解説されるので間違いは簡単に直せる。しっかりと読解力があれば。そういう意味で、この作品は最後に持ってきた。上の3つをしっかりと読んで、本作をしっかりと読み解けば物語を食すにあたって申し分ない味覚を得ることができるだろう。

 

おまけ

1名、個別にライターの紹介もしておこうと思う。

御影という方だが、彼の描く物語は繊細なイメージが私にはある。そしてその作品を繊細たらしめているのが、彼の文章だろう。それがなければ、読者はどこから触れればいいかわからずに物語を破壊してしまうかもしれない。おすすめは『アマツツミ』。上記4本をプレイした後、手に取ってみるといいだろう。

 

はじめにあくまで一つの解ですなどと言ったが、正直初めに言った人に当てはまらなければ、何も聞かず好きな作品を手に取ればいいと思う。というか別に他人が馬鹿だろうが初めから知ったこっちゃないのだがそれを言ってしまえばこの記事の価値がなくなるので控える。

これが絶対の答えだなんて愚かしいことは言ってはならないし、思ってもいけない。それでも私の思う最善に近いものを提示したつもり。何らかの形で参考になれば幸いだ。