はじめに
本作のライターである高山大河氏、言わずもがな知る人はまずいない。聞くところによれば今までもFAVORITEで少しお手伝いはしていたとのこと。しかし自身が全てを担当した作品は今回が初、つまるところ新人ライターである。
漆原雪人氏が実質的に次回作はないと思われるこの状況での登場は次代のFAVORITEを担うのではないかとも思えるが、それはまた別の話。彼は面白い話を書けるのか、そうではないのか、それに尽きる。
そうは言っても新人、過度な期待はしないと私は思っていた。無論才能ある者は新人であることを気にせず素晴らしいものを書き上げるのであろうが、それは事前にどう思っていたかなんて関係ないし、実際才能ある人物であったのならその時だ。
さて、この度FAVORITEファンの皆様におかれましては過去作でのロリ推しが圧倒的に減っていたと感じ、購入をためらったのではないかと存じます。しかしながら、その中で購入動機が性癖だけという方以外は、待ってはいただけないだろうか。確かに過去作と比べ、その圧倒的(個人差有り)なパワーこそないものの(そもそも比較するほどの類似点はないが)、高山大河氏作り上げた世界、またそこを生きる人々の心、そのどちらも申し分ない出来だった。というかロリキャラ普通にいます()
乾燥した部屋で完走した感想の間奏
全体として完成度はかなり高かった。要所要所で盛り上げ、そこに至る感情の構築は問題なくできていた。
ただ、そういった要所と、そうでない場面でやや面白さに差があった。ここでの面白さとは展開のことではなく、文章を読んでいて面白いかということである。共通前半、ソフィー√前半は多くが日常、及び準備パートであるが、正直退屈と感じた場面は少なくない。ただこれを責めているわけではなく、いや、これが後半で活かされなかったら責めていたが、本作に関してはよく活かしていたと感じたため、可能なら……程度の感情。
また各個別に関してどれも完成度は高め(√間にある程度の差は有り)。
カーレンティアが一番のお気に入り。彼女のはっちゃけ具合、可愛さ、それらをよく出せていた。「永遠に見ていたい」タイプのシナリオ。
クラリスはテンプレ展開ながらも丁寧な感情描写により特に悪いと感じさせることなく締めた。
ルーは正直なところ面倒だ……と感じ、ダレてしまったことが多い。
ペチカは予想以上に良い出来だった。前述の感情描写の緻密さがこちらでも発揮されていた。
そしてソフィー、彼女の√が今作のTRUEEND的な立ち回りだろう。
そろそろ終わりか? と思いきや第三部が始まり、そこからもかなり長い。因みに第三部は感情描写についての準備パートなのでやや退屈。しかし繰り返しになるがその退屈な日常を各場面での見せ所に昇華させ、これまでの退屈な感情は消え去るだろう。
またこれとは別に、この√では他と違った特殊な部分があるため、シナリオが重ならない。私はソフィーを最後に(厳密には違うが)回したので、「今まで当たり前に享受していた日常」の喪失を感じた。これがまた良い。本作のテーマは「成長」だと思っていただけに、こういった友人関係の尊さを語られては涙腺が緩むというもの。まぁ、これについても結局は「成長」に繋がるのだが、それは既プレイの人のみわかることとして、言及は避けよう。
それで最後がミヤビ√。なわけだが、これは正直おまけというか、サーヴィスというか、そういった側面が強く感じるので、言及はしないというか必要ないかなと。
。。。っとまこんな感じです。
あと主人公について。はっきり言って不快な言動が多かった。なんというか、その場その場に於いてナンセンスな言葉を選ぶセンスだけはあった。その最たる例がこれ
えーっと、多分わかる人はこれだけでわかると思うんですが、これはあまりに愚かしい。
その他無駄に「!」が多く、謎に大声を出しているように(実際出しているようだが)見えたり、どうにもその場に不適切な言動がやや多めに見受けられた。
緑茶式立ち絵運用法はやめろって言ってるだろ!!!
さいごに
不満点はいくつかあるが、全体として見ればかなり良い。退屈な場面が多いと言ったが、それはご愛敬、『さくら、もゆ。』が大好きな私たちなら大丈夫だったよね!
まぁその他ライター以外の点については流石のFAVORITE、なんの心配もしてなかった。
高山大河さん、次回作(FD含め)楽しみにしてますね!!
点数:73/100 文章:5/10 味:隠し味に苦味、酸味も多め、けれど美味しい作品。