思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『アンレス・テルミナリア』感想

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はい、ということでアンレス・テルミナリア。クリアまで半月くらいかかってしまったのは決して本作が面白くなかったそういうことではなく……ちょっと別件が重なってただけなので……。

まぁ、全体として普通に面白くはあった。発売前、正直心配してた部分があったけど、少なくとも人に勧められないというほどのものではなかった。とはいえ細部を見ればあまり面白くないと思うようなところは無きにしも非ず。ライターが狙って書いたようなパート、また真剣なパート、これらは特に言うことなく面白かったし、前者については竜姫ぐーたらいふで期待したようなバカみたいな会話が非常に心地よい。

しかしながら前述に相当しない、つまるところ狙っていないごく普通の日常パートについては退屈と言わざるを得なかった。以前、どこかで本作のライターを示した表現として「ロープラだからよいのであって、フルプラの長さだと絶対途中でダレる」というような言を目にしたことがあった。私自身近江谷宥氏の作品についてはロープラ作品の印象が強い。WhirlPoolの作品に、Piecesというものがあるが(私は未プレイだが)、これも同ライターの作品で、評判は二分していた。私の周囲では悪い方、それもとりわけひどいという声がなぜか多かったので自然と本作にも不安が募っていた。おそらく、この意見を述べている人たちはこの退屈な日常パートに耐えることができなかったのだろう。事実共感はできる話だと本作をプレイして実感した。この日常がなければ、そう願ってプレイしていた時間はそれなりにある。

だが、そうでありながらも全体として普通に面白くはあった、という評に落ち着いたのは先述の狙って書いたようなパート……ではなく、話の本筋が面白かったからに他ならない。とはいえ各個別ルート終了時点での感想を言えば、「まぁ……うん、面白くなくはないかな……でもいちゃラヴの質は高かったから満足」といった具合。

シナリオとしてはTrueでようやく真価を発揮した。やや、というよりかなり私好みの設定であることから若干評価が上方修正されてる感が否めなくもないが、確かに面白かった。

祈の審判者としての能力は非常のそそるものがあるし、なにより設定として発展性が高い。しかし、欲を言えばもっと序盤の段階でそれをほのめかす描写があれば、と思う。そうすればすっと入ってきて、作品全体の完成度も上がったと思う。身もふたもないことを言えば、これを面白いと思ったのは単に設定が面白かったから。

続いてキャラクターについての話だが、これについては流石の出来。シャロン、りな、ルチア、恋、それぞれがしっかりとしたキャラクター性を孕んでいて、個別ルートでのデレ、特にシャロンとりなの破壊力はすさまじかった。同二名のえっちシーンについても、完成度は高かった。もちろんルチアも良かった(というか見方によってはシャロン、りなよりも良く、濃いキャラクターだった)のだが、共通の時点でキャラクターが出し切っていて、個別ならではのインパクトが少し欠けてしまったかなと思う。それが悪いということではないが。そして恋。彼女も悪いキャラクターではなかった。ルチアと同じ理由で個別でのインパクトが薄れたというのもあった。しかしそれ以上に恋というキャラクターの人間性がどうしても苦手だったためにイラっとする場面が多々あった。

……といった感じ。退屈な場面、好きではない点、それぞれあったがやはり全体として良い作品だったと思う。少なくとも、同じ方式で近江谷宥氏が作品を出したとしても買うだろう。

 

点数:69/100 文章:5/10 味:おいしくはあるものの、少し薄味であることは否めない