思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『CyberRebeat -The Fifth Domain of Warfare-』感想

ハッキングが題材ということで、正直かなり地味な作風を想定していた。暗い部屋でカタカタ、カタカタと、そんなイメージを漠然とハッキングというものに対して抱いていた。まぁ実際そうなのであろうし、作中でもそういった旨の話をしていた。しかしながら本作ではそういった地味な部分を切り落として、外野から見た「華やかなハッキング」というものを魅せ切った作品だと感じた。

Warlock──本作ではたびたびこの名前が挙がっていたが、彼ら、ヒロ、ミサ、サラの三人はまさしく魔法使いのようで、間もなく私を魅了した。なるほど確かに、少年漫画的で熱い展開だった。やってることの詳細を聞かれると口ごもってしまうのだが、前述の通り外野から見た「華やかなハッキング」が本作のメインとなってるため、問題なく読み進めることができる。また、全体的に文章が良い意味で癖のあるもので、それにより程よい疾走感を与えることができているのも良い点。

敵の存在も「主人公たちが世界最高のハッカーであることを踏まえたうえで、なお強敵として立ちはだかる」という図が非常に巧く表現されていた。その理由として相手の未知性がある。ハッカー同士の戦いであるのだから、無論相手の顔は見えない。なんなら仲間の多くも互いに顔を知らないことも多い。そんな状況で熱い展開を見せているのだから本当にすごいとしか言いようがない。

しかし、これは勝手に私が定めているだけの基準に沿ったらそうなったというだけの話でしかないのだが、少年漫画的面白さというのは実際の少年漫画含め、得てして良作以上名作未満という形に収まってしまうことが多い。本作も例に漏れずそうなった。無論単純な面白さという指標では非常に高くはあるのだが、私の中での点数というものは面白さとイコールで結べるものではない。根本的に、「なにか足りない」と思ってしまうのだ。とはいえその何かの正体がわかっているというわけではないのだが。

閑話休題。このようなみみっちいことは一旦置いておこう。事実として単純な面白さで言えば本作は名作傑作と呼ばれるものに負けずとも劣らない(その「面白さ」の意味が多少異なることは置いておくとして)。疾走感のある作品のため基本ダレることもない(少年「漫画的」と言われる所以の一つとしてこれが挙げられる)、気軽におすすめできる作品である。

 

点数:78/100 文章:6/10 味:旨味多め