思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『ウィザーズコンプレックス』感想

f:id:AppleSoda496:20211206181324p:plain

本作、何かと微妙な評価を受けてるみたいだけど正直普通に面白かった。まぁ外野が手のひらドリルなことを主として、気分の悪くなるような場面はいくつかあったものの、そんなのエロゲという媒体においてはよくある話だろうということで別に。「女の子だから~」のようなキモい思想が強めに出てたことは確かだが、日常パート、また全体的な展開としてライターの実力を感じさせる面白いものだったためこれも(まったくというわけではないが)スルーできた。しかしながら日常パート、山場、双方ともにそれなり以上の出来であり、普通に楽しめたのだが、どうも日常イヴェント(前述の日常パートより少し特殊であるが、日常の域を出ないような展開)は白目向くほどつまらなかった。こほん、まぁそれは些事。

先に挙げた例の中では、手のひらドリルな外野が一番つらかった。簡単に言えば野球とかサッカーとかでチームが負けたらとんでもない罵声浴びせるオッサンみたいな感じ。それがイヴェントごとに起きるため、気分はそのたび悪くなる。

全体を通して悪くないどころか普通に良いと言える出来だと思うが、その分悪い部分も目立っている、といった印象だった。

また、キャラクターについて全員をサラッと見た段階ではさして魅力的なキャラクターはいないという感想。しかしこれもライターの力量を感じさせるには十分で、気が付けば魅力あるキャラクターとなっていた。特に神楽坂鳴と竜胆ほのかは幾度となく作中で読者である私に癒しを与えてくれた。

これは個別ルートでも遺憾なく発揮され、ひいてはHシーンの導入部も相応に魅力的なものとなっていた。その個別ルートだが、先刻と同様、ところどころ首をかしげる展開等あるものの、全体を見れば概ね良好だった。とはいえその首をかしげるような展開の一つが、真剣なのはわかるがギャグのように見えてしまって滑稽さが拭えないというもの。私の嫌いな展開TOP3を挙げるとしたら、まず間違いなく入るくらいには嫌い。そのためどうにも拭いきれない印象の悪さが存在しているルートが一部存在する。

といった具合で、まぁ嫌な展開等マイナス要素は多々あるが、クオリティの低い作品では決してない。加えてほのかとアイリスについてはラストでなかなかのものを見せてくれた。特にアイリスルート終盤でのほのかは、(このルートを最後に回したということが大きいとも思う)ぐっと心に来るものがある。

ただ、本作で一番のお気に入りの展開が、アイリスBADだった。

f:id:AppleSoda496:20211206194155p:plain

賛否両論あるとは思うが、非常に心打たれた話であった。簡単に説明すると主人公とアイリスがあまりの心労で追い詰められ、最終的に二人で心中してしまうという顛末。大衆の醜さ、また自分自身も大衆の一人であるという自覚、そういった現代社会に対する問題に鋭く切り込んだ話だったと感じる。自分たちは素知らぬ顔でなんらかの代表者の失敗を叩くのかもしれないが、その代表者だって一人の人間であることを忘れてはいけないのだ。それを主人公たちの死によって痛感させられた。

 

……というのはまぁ嘘なんですがね。

 

ウィザーズコンプレックス、良作でした。

 

点数:68/100 文章5/10 味:ちょーっと苦いかも