思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『ハロー・レディ!』感想

端的に述べて面白かった。それにストーリー全体として疾走感があったため、スラスラと読むことができた。だが先に言っておくが、文章力は決して高くない。それでいて大仰な表現、詩的な表現を好むため、そういった文章を好む人でないと読みづらいこと甚だしいだろう。あくまでスラスラと読むことができたのは物語に疾走感があったからであり、文章で魅せるということはできていない。好き嫌いの分かれる文章だろう。尤も、えちげーまーにこの表現を嫌う者がいるとは思えないが。

さて、この物語は成田真理による復讐の物語である。たとえ虚しいものであろうと、彼はそれを成し遂げなければならない。何故ならそれこそが成田真理の生きる目的であるからだ。ああ、なんと寂しい生であろうか!それでも彼は往くのだ。情に流される程度のものではない。生き方なのだ。それがどうして「愛」程度のもので阻むことができようか!

時に、わたしは本作を読み進める上で何度か「呆気ない」という感情を抱いた。そのうちの3点を紹介しようと思う。まず一つ、成田真理のハローについてである。朔√までしっかりとした説明がされることはなかったが、能力自体は何度も登場していた。それが所謂言霊だ。しかし最後まで隠すのだから、まさか成田真理のハローがこれで全てなわけがないとずっと考えていたのだが、そのまさか、成田真理のハローはこれで全てだったのだ。言霊は成田真理のハローの一端でしかなく、強大なハローを持っているとずっと期待していた。そうでなくとも、ラストバトルで何かに目覚めるなんて展開も設定的に無理はなかろうと思われる。

そして2点目であるが、そのラストバトルである。能力ものを読む人ならなんとなくこの気持ちが分かると思うのだが、ラストバトルの敵は非常に強力なハローを持っていて、倒すには同じくハローでなければならないと直感的に感じるわけだ。しかし先刻も言った通り成田真理のハローは言霊で全てだ。正直このあまりに強大な敵に立ち向かうには弱い。そこで登場するのが、メインヒロインの朔だ。彼女のハローは対象のハローを奪って、自分が使えるようにするというもの…ではなく、なんだったか…物体の再構築だとかなんとか…。まぁ、そのことに最後の最後で気づいたと。それで敵の体をハローのない体に再構築した…というのが事の顛末。わたしの説明があまりに拙いので笑ってしまうが、それでもなんか呆気ないなと思ってしまった。

3点目は特定の場面のことではないのだが、エル√でクレショフ効果について話す場面があり、どうも読者にクレショフ効果を期待しているように感じてならない部分あったように思える。言ってしまえば展開が雑な描写がいくつか見られた。

というように、本作は「呆気ない」が目立つ仕上がりだったと言わざるを得ない。だが、無論それに勝る面白さもあった。でなければ初めに面白かったなどと言う筈はない。何度も言うが全体の疾走感、主人公の揺るぎない信念、それらは本当に素晴らしかったと今一度言っておきたい。

さて、総評に移る。簡潔に申し上げて、良い部分と悪い部分、どちらも目立つが、良い部分の方が多い作品であった。文章力はさほど高くはないが、好きな文章ではあった。採点もそれなりに難航した。正直悪いところを見ると70点もあげていいのかと思ったが、いいところはしっかりよかったので、70点はつけられる出来だったと思う。因みにBGMは良かった。テンプレートを踏みつつ、しっかりと場に合ったものをセレクトしていたように感じる。

点数:70/100   文章力:普通