思考溜り

その名の通り、ここには思考が溜る。どんなに崇高でも、下賤でも、わたしの思考の全てはここに溜る。

『終のステラ』感想

 

 

 

適当な話

全体として、非常に綺麗な物語であった。そのことが何よりも今は嬉しい。ここ最近、質は高く私好みの作品であったにもかかわらず、どこか致命的な点を見つけて消化不良感を感じるような作品が多かったのだ。その点本作は最初から最後までブレることはなく、幕引きについてもこれ以上なく精神の浄化作用は働いた。

物語を構成するものの多くはジュードとフィリアの旅路、それに伴う二人の交流だろう。最後に別れがあるとわかっていながら。どうせ最後には情が生まれて別れが惜しくなるのだ。そんなものは多くの人がわかることである。ゆえに絆の形成、それをいかに伝えるか、我々が受け取るか。正直なところこの長さの作品では少しそのあたりが弱くなってしまうのではないかと心配していたが、まったくの杞憂だった。

基本的に旅はフィリアと二人きりだ。道中他の生命体が現れるが、およそ知的生命と呼べるような行動はしないため、その他機械たちと同じただの敵である。長く険しい旅路では、時にフィリアを教育したり、時に怒ったり、はたまた仲間のように行動したりもした。その過程でジュードはこのアンドロイドには心というものが備わっているという認識を持つに至った。ただの人間では一緒に絆を育むことができました。良かったね、で終わるようなことでも、当然アンドロイドが相手となれば話は変わる。前提として心の有無の議論は必須課題となるし、そのうえで明確な定義を持ちながら相対していかなければ何も感じることはない。本作において主人公であるジュードが最初はアンドロイドの心を否定していたことは私としてはとても入りやすかった。だからこそ本作における人間らしさというものがジュードのフィリアを見た驚きを通じて私にも伝わった。不気味の谷に、落下する暇さえもなく私はすぐにフィリアを人間と認識するに至ったのだ。そこからは早い。ジュードとフィリアの旅はすでに二人の人間の絆を生成する過程でしかなかったからだ。だからこそ終盤でのフィリアの怒り、ウィレムかフィリアかの選択、こういった場面では涙を流さずにはいられなかった。

 

ウィレムの話

そう、そういえばウィレムという老人がいた。いかにもな風貌といかにもな計画。これこそフィリアを犠牲にして人類が進歩するような計画であるに決まっているではないか。

ウィレムはジュードにフィリアと対話をし、心を形成させることを望んだ。心とはすなわち人たる所以であり、つまるところウィレムはフィリアに人たるを望んだ。その過程でジュードはフィリアの人間性を認めたし、老人との敵対も起きた。そう、敵対したのだ。

「だが忘れるなジュード……その者は……どれほどの知性を宿そうが……エワルドのためのハダリーなのだということを」

ウィレムはフィリアの人間性をついぞ認めなかった。上記の言葉から察するに、強弱はともかくとしてなんらかの意志を感じる。人類の復興というかねてよりの夢は、それを支える意志も並みではなかったということだろう。あるいは幾年もの日々、薪に寝て苦い肝を舐めたその辛酸によるものだろうか。

 

娘の話

作中では何度も娘という表現が使われた。しかし最初フィリアを表現する言葉は愛玩用以外に思い付かないというものだった。

娘という表現はその者への強い愛情を表していると同時に、最初使われたこの愛玩用という言葉を否定しているようにも感じた。ただ、これをアンドロイドの術中に嵌っていると捉えることもできるのはなんと悲しいことなのだろう。人に愛され、共同体に潜入したアンドロイドが工作員として何か任務を遂行することは実に容易。だが、フィリアに限らずAe型アンドロイドをそういった目で見るのを私はしたくなかった。ウィレムの下で働いていた者たち、デリラ、そういったアンドロイドを見ているとどうしても、意志の強さに強弱があるだけでデフォルトの工作任務のような行動設定はされているとは思えない。無論、マスターと認識されている者に命令されればその限りではないが……。

ジュードは、最終的にフィリアが娘であることを認めた、否、望んだ。愛玩用などと考えることすら悍ましい、この愛する娘の名はフィリア・グレイだった……。

作中にはもう一つ親子関係に当たる人間とアンドロイドがいた。デリラとその父だ。ウィレム曰く、当時のデリラはひどい状態で、とても納品と呼べるものではなかったそうだ。正直なところ私はウィレムを悪人だとは欠片も思っていないので嘘をついているとは思いたくないのだが(もし仮にこれから言うことが事実だったとしても、外部情報だけで判断したためそう思わざるを得なかったためどちらにしろウィレムに悪意はなかったと考えている)、単純に戦闘に関して荒い部分があり、同様の戦闘をデリラも行っていた。そのため全身に傷がつき、製品不良とも言える状態となったのではないか。また納品時の精神の不安定性においては単純にフィリアと同様なんらかの蟠りが発生したのではないか。……そうでなくとも、私は、デリラの穏やかな休息を否定したくなかった。時に厳しくするのが親なのであれば、子が拗ねて口を利かなくなることなどざらにあるだろう。そうであった可能性に、私は賭けたいと思った。

 

総括

非常に私好みの展開で良かったです。特にラストのお墓は本当に良かった。死期を悟った自分が、何か言い残したことはないかと必死に言葉を探す。ここまでの旅で得たものすべてが走馬灯のように蘇り、同時に涙が溢れてきた。ジュードとフィリア、二人の絆は確かに届き、胸を震わせた。

アンドロイドとして、綺麗に人を描いたことが本当に素晴らしい。とても満足感の高い作品でした。

 

 

点数:86/100 文章:6/10 味:酸味、塩味

現実という閉鎖空間

最近現実がとても大きな閉鎖空間に思えてならない。正確に言えばわたしの生活圏内なのだが、まぁこの最近が示す期間内に生活圏内から出たことは非常に稀なのでまぁ無視しよう。とはいえ生活圏外が一概にそうではないのかと問われても少し首をかしげるところではある。生活圏内から離れれば離れるほど閉鎖的要素が鳴りを潜めることは確かなのだが、やはりそこは現実世界なのだという認識は依然として存在し続ける。海外まで行けばないに等しいほどにはなる。しかしコロナ以降海外渡航はしていないので意味はなし。

つまるところ変化のない日常というものはわたしに負の影響を与えている。やだ……まるでコロナで家にこもりっきりでうつになっちゃうよなんて言ってる「一般人」みたいじゃないですかーwww ……あたし、一般的な感性(笑)持ってたみたいです。まぁ毎日大学に行く生活よりも毎日家にこもりっきりの方が良い……のか? わかんないよぉ……。取り敢えずぼくは旅行に行きたいですね。本当だったら20年の2,3月あたりにイタリア、フランスに行く予定だったんですが潰れました。前回イタリア行ったときは知らなかったので仕方ないことではあるけどARIAの漫画片手に「聖地巡礼しましたー!」って感じのオタクっぽいことしたかったです。

こういう妄想をしてるととても気分が悪くなります。世界が広い~~~~~。そしてあたしの生活空間狭すぎ~~~~~。世界の広さを知った蛙は、一生檻の中で過ごすのかな? まぁあたしは世界の広さなんてこれっぽっちも知らないんですがねーーwwww

教えてくれ! このあたしに、世界の広さというものを! そしてわたしは宇宙飛行士を志したのであった──── -完-

終わらねェ……これが、あたしの物語だから……!

・・・・・・くっだらねぇ、なんだよそれ! バカバカしい!

いや、本当にくだらないんですよね。つまり窮屈な現実にちょこっと嫌気がさしていますってだけの話なんですよ。それ以上でも以下でもなくて。でもわたしはここ最近になってようやく気付いたっていうか、もしかすると普通の人は割と早い段階で気付くんじゃないかなって思って。怖いですね。よくあります、それは我々が2000年前とっくに通った道だァ! ってこと。世の皆様方はどうやって克服してんですかね。それとも我慢? そんな強さ、アタイにはなかった……。

閑話休題。当然それを解決するのは虚構ダイヴなのですが、どうにも最近「ちょうどいい作品」がない。虚構ダイヴのideal世界を有する作品、いつも頭に浮かぶけど作品名に心当たり一切なし。これこそが虚構だった……? 戻ってきて、虚構のダイヴは現実あっての恵み、完全なる逃避は虚構の役目じゃないよ。

ふと思ったけど、現実とはつまり生活圏内、及びそれに近しい場所。海外旅行はそこからの逃避行、元気もりもり未知パワー! 虚構ダイヴとはつまり、海外旅行のようなものだった……? ああ、安住なきホームなんて、どうしてそんなものに頼ることができるのでしょう。と言いつつ頼っております絶賛虚構の奴隷契約更新中。ん、虚構ダイヴが海外旅行のようなものだとすれば、虚構世界とはまさしく国家? 世界なんてそんな単純かつ大層なものじゃなかったんだ。すげぇ、今すぐフリギア王国に国籍移してきます。これから国家の従僕として、よろしくお願いしますね。

好きなノヴェルげ50選

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FD及び続編は適宜統合もしくは除外。

 

ふとした思い付きを適当に挙げてっただけのものです。抜けがあるかもしれません。また、先述の通りふとした思い付きなので点数ほどの厳密性はなく、明日には結果が変わるかもしれない程度のものです(とはいえ大きく変わるということはありませんが)。

 

今回のランキングはあくまで「好き」のランキングです。いつも記事の最後に付している点数とは基準が異なり、完全な主観によって定めています(点数は主観的客観性を重視しています)。

 

コメントはあったりなかったり。

 

1:竜姫ぐーたらいふ2 100

言葉は不要ですね。

 

2:穢翼のユースティア 96

「下」から「上」にどんどん上っていく、這い上がっていく感覚、それを綺麗に描き切っており、また価値観に着目した主人公の葛藤も見事。価値観を主軸としたさまざまなテーマを描き切った見事な作品。

 

3:アメイジンググレイス -What color is your attribute?- 87

初冬茜トム作品。彼の作品は当然終盤に明かされる大きな情報がメインであるが、同時にキャラクターを引き立たせること、それによる日常パートの濃密さ、それらが合わさった結果だと思っている。そして得たのは至上の喜びだった。あの開示を見たとき、このライターに一生ついて行こうと決めた。

 

4:さくらの雲*スカアレットの恋 87

前述の情報開示もさることながら、本作はキャラクターを独りに一点特化させた作品だった。もう所長に関連する情報を見るだけで涙が出る。

 

5:冥契のルペルカリア 89

演劇というなんとも私好みの題材を大衆的に描いた作品。それでいてルクル的キャラクター展開も見事に備わっており、面白くないはずがなかった。折原氷狐

 

6:はつゆきさくら 85

私の初エロゲだということは何度も言っているが、やはり初めてという印象に関連付けられた衝撃は大きい。同時に卒業というテーマを私の心に強く植え付けた。新島夕的世界観と卒業、そのマリアージュは初めて触った作品ながら未だこの地位に居座る強さを示している。

 

7:ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world- 92

主に最終決戦について言いたいことは山ほどあるが、それはそれとして最終決戦よりも前までは完璧と言っていい出来だったし、上記アメイジング・グレイスにて書いた「冬茜トムに求めること」は達成されていた。加えてファンタジー、人種/種族、国家、これらを一つの作品で描き切っただけでもその価値は計り知れない。

 

8:Forest 99

物語的物語、その極致。古典の引用やオマージュ、そういった行為は悪い意味での臭みを与えることが多いが、得てして名作というのはそういうものであることも多い。昔はすべて自分の作品で構成されていないという意味で好きではなかったが、今では逆に物語としての価値をいっそう高めることだと知っている。虚構の頂点の名を冠する作品は伊達じゃなく、まさしく虚構としての頂点に立っていた。

 

9:天使の羽根を踏まないでっ 86

ある種作品の性質としては冬茜トム作品と似ているところがあるかもしれない。表面的に見て、大きな情報を物語のメインとするのは冬茜トム朱門優両名が得意とするところだろう。本作はその情報に途方もないほどに時間を遡ることで歴史的深みを持たせている。正直、山場以外のところを見るとイマイチではあるが、その山場があまりにも強い。

 

10:水葬銀貨のイストリア 87

紅葉さまがこの世で最も強いヒロインだっていうお話。

少しルクル的な性質を排して、大衆的な面白さを高めた作品。故に単純な面白さでは他に勝る。

 

11:恋×シンアイ彼女 84

”本質”を見ろ──!

 

12:Scarlett ~スカーレット~ 88

日常と非日常の境界、一貫してそのテーマを描いた作品。我々のいる世界を日常としたうえで、作品内では非日常を描くことでその特殊性がありありと感じられてとても気持ちがいい。

 

13:サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う- 94

 

14:虚構英雄ジンガイア 95

 

15:魔女こいにっき 84

 

16:乙女理論とその周辺 83

キャラクター同士の掛け合い、その究極系とでも言うべき完成度の高さ。実際ただの日常パートがシナリオと関係なく何度も読み返したくなる。またストーリー展開としても雑なところは多々あるもののそれを気にさせないテンポの良さと面白さ。一点のヒロインに特化したつり乙とはそこにおいてのみ負けるが、それ以外は圧倒的に勝っている。

 

17:君の名残は静かに揺れて 90

現実的三角関係恋愛の到達点の一つをWA2とするならば、これは半幻想的恋愛の到達点の一つであると考える。身分の差、それによる実家からの横槍、その実家内での確執。半ば現実ではあり得ないことと化しているこういった恋愛模様を現実的に、ひしひしと伝わる実感のこもったシナリオが素晴らしい。

 

18:紙の上の魔法使い 88

同人時代のことを知らないのでなんともなところではあるが、この作品にルクルというライターの基本情報はつまっていると感じた。最初の作品ではないが、ある種原点的な強さのある作品。

 

19:金色ラブリッチェ 85

テーマ性、メッセージ性、それらを非常に高い水準で描いた作品。カッコよくねー人生なんてゴミだ、などとはよく言ったものだが、それを命を懸けて守る姿はあまりにも美しかった。

 

20:ナツユメナギサ 83

 

21:もののあはれは彩の頃 85

 

22:WHITE ALBUM2 91

 

23:俺たちに翼はない 85

 

24:アインシュタインより愛を込めて 83

 

25:素晴らしき日々 ~不連続存在~ 92

テーマ的な難解さもさることながら、この題材で一つの作品を描き切ったというすごさ。単純な完成度ならばサクラノ詩を超えるできであることは確か。

 

26:彼女たちの流儀 86

鳥羽莉という唯一のヒロインに恋をするだけの作品(そんなわけないです)。

 

27:いつか、届く、あの空に。 78

ふたみルートが順調かつ正当に物事が進んだ結果起きた当然の帰結、此芽ルートが少し誤算があったものの、あり得なくはない結末、そして傘ルートがあり得ない結末。それぞれ「個別ルート」としての価値が非常に高く、またKanon問題的なものも考えられる。もちろん先の朱門優がライターを務めている本作当然面白かったが、それ以上に資料として価値の高い作品。

 

28:CyberRebeat -The Fifth Domain of Warfare- 78

なによりも全体の疾走感が凄まじい。何を言ってるのかわからないことはしばしばあったが、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに話が進む。そしてそれで問題がない。

 

29:さくら、もゆ。 -as the Night`s, Reincarnation- 90

 

30:白昼夢の青写真 84

ラストさえなんとかなれば、恐らく一生心に残るほどの作品だった。昔は安易に殺すなといったものだが、今では安易に生き返らせるなと思うことの方が多い。

 

31:アマツツミ 83

私的御影作品最高傑作。物語としての繊細さが際立ち、そこにライターの力量がいかんなく発揮されている。

 

32:ひこうき雲の向こう側 85

 

33:向日葵の教会と長い夏休み 83

 

34:CROSS†CHANNNEL 89

 

35:いろとりどりのセカイ 86

 

36:グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRIZAIA- 77

果実は良くも悪くも似たような展開で、少し飽きる部分があるが、十分に面白い出来ではある。問題は迷宮と楽園。迷宮のメインシナリオは雄二過去編だが、これがまぁ面白い。果実で朴念仁のやべーやつだった雄二がどんな壮絶な過去を過ごしてきたのか、そして実際にその過去があまりに凄まじく思わず拍手を送ってしまった。

楽園については正直良くない部分も多分にあるが、単純に欲しいものが提供されたので満足ですといった具合。

 

37:月に寄り添う乙女の作法 76

ルナ様と言えばエロゲをプレイする人の中では「綾地さん」に匹敵する知名度だが、事実としてそこまで好かれるだけのキャラクターであった。またルナ様の陰に隠れがちだが、ユーシェルートもかなり良い。他二人は知りません。

 

38:大図書館の羊飼い 75

 

39:夜明け前より瑠璃色な 76

 

40:Justy×Nasty ~魔王はじめました~ 70

 

41:恋愛×ロワイアル 78

由奈ちゃんなんだよね。

 

42:この大空に、翼を広げて 77

半幻想的清涼的恋愛模様をとても上手に描いた作品。プレイしているだけで心が浄化されるような雰囲気作りは見事。

 

43:恋色空模様 74

なぞに権力強い先生に歯向かう物語。変なところはあるが妙面白さがある。

 

44:ピュア×コネクト 74

SMEE最高傑作。恋愛とギャグのバランスがちょうどいい。

 

45:ハロー・レディ! 70

失踪間のあるシナリオに、癖のある主人公。私的には暁の護衛の上位互換だと思っている。主人公の能力とそれに伴うラストバトルを除けば完成度は高い。

 

46:メルクリア ~水の都に恋の花束を~ 66

この作品、実は嫌いなキャラクターが多すぎてクリアしたルートが一つしかない。作品としての完成度がずば抜けているというわけでもない。それでもここの入ったのは偏に「好き」だと思わてくれたことにある。やっていることは日常を描き、その大切さ、尊さを説く。そして別離と再会。他にこんな作品はあるだろう。しかしそれでもこの作品が好きだと、ただ直感的に思った。

 

47:放課後シンデレラ 74

プロえっちげまさん推薦作品です。

 

48:箱庭ロジック 69

ゆき恵さん絵作品最高傑作。

 

49:枯れない世界と終わる花 72

本当に好きだけでここにいるような作品。72点と結構な高得点を出していますが、そこまでではないと思っているところもあります。でも好き。

 

50:キサラギGOLD★STAR 61

ノーコメント。

『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』感想、他

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未プレイの野蛮なセリオンどもはさっさとプレイしてから読んでください。

 

 

 

はじめに

ということで待ちに待った冬茜トム新作です。過去作、勝手にリープものの三部作として彩頃、あめぐれ、さくレット、まぁ実際にリープはしなかったのでそういう意識はあったりするんですかね知らないけど。

過去の三作は作品の性質上序盤から終盤にかけての主人公陣営の知識がマイナスになる。つまるところ基本的に物語の向かう先は「普通の状況であればそこまで苦労せずに手に入る情報」であり、故にこそ世界そのものであったり、文字であったり、はたまた元号であったりと、「聞けばわかる」情報が物語の根幹をなしていた。

しかしながら本作ではリープなんてないし、主人公の知識もマイナスではない。それなのに今回のメインとなるトリックもまた「聞けばわかる」情報だった。なればこそ、過去作と重なるのは「常識の乖離」であり、違うのは主人公の異質性に他ならない。では言い方を変えるべきで、「外部の人間」という異質性フィルターが実質的に消失した本作では、「聞けばわかる」という緩いガードではなく「聞かなくてはわからない」情報だった。おかげで私は主人公以外が異質であるという認識を捨て、最終的に出した結論は主人公が異質であるというものだった。直前の「僕は──吸血鬼じゃない」という発言も、種明かしの直前であったにもかかわらず私は自分に言い聞かせている言の類だと思ってしまった。そしてその後のCGを見てもなお、別の可能性を疑っていた。それは吸血行為に対する悍ましい嫌悪感とともに「一体いつそうなった?」と。私はバカだからどうせ大した推理なんてできないと分かっていたが、ここまで疑ってかかって、ここまで綺麗に引っかかっては気持ちいいとしか思えなかった。吸血鬼の存在は何度も示唆されていたし、種族間の諍いがなんらかの問題になることも分かっていた。それでもトリックを見抜くことができなかったのは流石としか言いようがなかった。

 

意志について

本作で大きなテーマとなったのは意志とそれを具現化した宝石だった。各々が意志となる宝石を身に着け、戦地に赴く。それは彼らがどんな思想を抱こうとも、根幹には決して侵されることのない強い思いがあることの表れだった。正義も悪もない、あるのは勝者か敗者か……それを体現するかの如く「敵」にも「味方」にも確固たる信念があったし、それを愚弄することなど到底できることではない。

アリアンナは、空を飛びたいと願った。しかしそれだけの願いであれだけのことを叶えるというのは尋常ではないらしい。実際アリアンナ自身の願いではない、英雄と同じ意志、超越。少なくとも単に空を飛びたいだけの意志ではないことは作中何度も言われた。だというのに私は空を飛びたい、その純朴なる願いが最硬の意志を生み出したと思えてならない。ただの利他的な思いではなく、ただの激情でもなく、唯一、その赤子のような願いが種族を背負うわけでもない、一介の多数派に抱けたダイアモンドの意志だったのではないかと、私は信じたい。最強の鉄山靠を、最硬の翼で仇敵にお見舞いするために。それは誰よりも利己的で、感情の方向こそ違えど、アストゥリオスのダイアモンドと似ているんじゃないか、そう思った。

ノアは、対照的に利他性の極致にある意志の持ち主だった。たとえ今際の際であろうとも笑顔を絶やさず、最後まで共和国の実現を信じてやまなかった。

「けほっ、けほっ! ふふ……大丈夫、です……私は──もう、為すべきことを、しました」

仲間を信じ、また自身の種族を信じた。たとえ凶弾の主が同じ吸血鬼だったとしても、いつか必ずわかってくれると。これは幼さゆえの傲慢だろうか。否、直前の演説を聞き、どうしてそう思えようか。彼女は確かな未来を見据え、後世にノア・フォン・レオンシュタインという吸血鬼の存在を遺したのだ。

みんな、意志を持っていた。それは目的であり、願いであり、別たれぬ思いの結びつきだった。強き者は肉体が失われてもなお遺志を残し、願いの成就を渇望した。そこに貴賤はなく、意志を宿す者は信じていた。自らの行いが正義なのか、そうでないのかは関係なく、ただ崇高なる願いを。

 

χについて

「ヴァンパイアは……毒だ」

「私たちは……地上に……生きてちゃ、いけないんだ」

 

「ヴァンパイアなんて、滅べばいい」

「この地上から、消えてなくなればいい」

 

「最後に、名前くらい──教えてほしいな。思い出したのなら」

「ギメル」

「ギメル・ロードベインだ」

「……きれいな、名前」

「私のぶんまで──生きてね。ギメルくん」

心優しき吸血鬼は、一人の人間の生き方を縛り付けた。無論、これは彼の意志があって進められたことだ。誰にも語らず、ただ一人、生涯で一度だけ愛した吸血鬼の願いを叶えるために吸血鬼を滅すと。即ち朔の日とは吸血鬼滅亡の日であり、32年間うちに秘められ続けた心優しき吸血鬼の願いが成就する日でもあった。

「おまえ達の理想は……相わかった。歓迎すべき未来と、賛同しても構わない」

「だが、だとしても。セシリアの願いは──成就されなくてはならない。慈愛に満ちた、彼女自身の夢ならば」

「彼女の意志に添うことこそ──おれの生涯、ただ一つの意志だからだ!!」

「黄金とは不変の象徴──あの日、空に誓った輝きを、おれは決して忘れはしない」

 

「良い吸血鬼──尊き友情──そんなものは知っている!」

「だが、それと──種で争うことは別なのだ! 我々の生は所詮、種という強大な大樹の枝先でしかない!!」

彼の黄金の意志は、あの日から欠片ほどにも変わらず守り続けてきた。セシリアの意志を。悲しくも愛した吸血鬼のために吸血鬼種を滅さんとするは彼の背負った業に他ならない。だからもう立ち止まることはできなかった。

最早彼をただのコンキスタドールとすることはできない。ああ、知っていた。でもやはり、不可侵の意志があって、たとえ誰であろうと否定することはできないんだ。

 

終盤

まぁ、こんな素晴らしい作品と思っていたのも束の間、エウリュアレが出た瞬間すべて冷めましたね。できればこのパートに目を瞑って、なかったことにしようかと思ったが、そうはしてはならないと私の意志が輝いた。

第一に、舌を出すのをやめてほしい。それだけで(仮にそうでなかったとしても)小物間が何倍にも膨れ上がる。そうでなくとも綺麗に終わったと思わせてからのこれだから、正直キレそう。エウリュアレとの戦闘自体もさっきギメルと戦った素晴らしい戦闘と同じようなものだし(その素晴らしさもギメルという非常に魅力的なキャラクターあってのもの)、こんなのを2連続で入れるのは流石にない。それでいて結局私たちだけでは倒せないのか……という展開。まぁギメルの後に来るならギメルより強いのは当然、意志を折ることで勝利を収めた先刻とは違いエウリュアレにそんなものは通じない。すると力が……! その力の根源は、なんとアトラスで戦ってるみんなが意志を空に掲げていたからなのです!!! ふっざけんなボケ!! なーーーんでいきなり元気玉仕様になってんだよ。いつそんな説明あったよ。くっさい意味不と最悪の展開。一体私は何を見せられてるんですかね……そんな気分になりました。さっきまでボロボロ涙こぼしてたのにこの部分を読んでるときは終始真顔だった。返して、私の想いを、返して!! あと意志の名前な、煌キ禍ツ貧婪ト燦爛ノ無何有郷・赤楝蛇(デッドサーペントエンドブリリアントワンダーワールド)ってなんだよ。今までコンパクトにまとまってたからよかったのにこんな長くしたらもう別のジャンルだろうがよ……それにしてもこんな長い名前をつける作品は嫌いだが。

でも、それでもここを否定しきれない理由があって、それがこの後の展開ですね。自信を犠牲にして、エウリュアレを封印するというもの。加えて第二のアストゥリオス、つまり賢者の石となって日光耐性を与え、もう一つ人間の血をまずいものとした。これで平和は完成、アリアンナの犠牲とともにノヴァ大陸は平穏を取り戻した。非常に私好みの良い展開。ああ、やっぱりこの作品は最高だ……さくレットのラストにも似た感情で感慨に耽り、さっきのゴミには目を瞑ることにした。

なのに、なのに! やりやがったぜこいつ……。アリアンナを復活させやがった! エウリュアレ討伐前まで時間を巻き戻し、神に等しい力を得たアリアンナが完全に倒しきって、終了。……ふー。画面をぶん殴りたくなりました。これの何が嫌って、結局死を否定したこと、そしてエウリュアレとかいうゴミと違って、ある程度筋が通ってる分完全に否定もできないということ。そもそもEDのパリンって演出も結構よかったし(小声)。先ず、アリアンナがいないということに気付いて世界を変えるのは少し前に同じようなことがあったということだ。このイヴェントが事前にあったぶんなまじ納得の感情が生まれてしまって否定するにしきれない、ただ感情で嫌としか言えなくなった。それに真ENDでの卒業写真、あんなの泣かないわけないだろ……。みんなが、築き上げてきたものがこうやって写真として収められて、「卒業」という形で幕を閉じる。これ以上ない幕引きで、これまでのすべてが浄化されるかのよう。長かったここまでの生を集約して、また未来へはばたく翼となるよう、願ってやまない。

しかしエウリュアレ、やっぱりてめーは何があっても許さない。パラスなんかよりもよっぽど醜い女だよ。あ

あと忘れそうになったけど最後の最後でカーラの「組織」とかいうとってつけたようなの入れたのも許さんからな。CS版追加シナリオじゃなくてFD出せや。

 

その他

相変わらず冬茜トム氏はキャラクターを魅力的に描写するのが巧い。最初はベルカとルビイが好きだったが、当然のように全キャラ魅力的に映った。そして何より本作は男女比がちょうどいい。いや、もしかすると単純な人数が多いからそう見えるだけで比率自体はさほど変わらないのかもしれないが。

一番印象的なのはヴィクターだろうか。射撃部の顧問を務め、射撃の腕は一流、それでいて自身の得物は刀というギャップ惚れ。なんだかんだでこういう系統はキャラクター的にも戦闘的にも強いですよ。実際キルスティンといい勝負をしたメイナートを圧倒したのだから、相当なものだろう。なのに教師としての在り方について悩み続ける繊細さもよき。スペシャリストであっても悩みは尽きない、等身大のヒトを見せてくれる教師の鑑。

ところでルビイの能力を吸血鬼を内部から破裂させるということのほかに吸血鬼、もしくは自身の血を使って刃を作り出すというものもあった。一方ソーマの能力は醜い生き物を灼熱に包みそのままサファイアに変えるというものだった。……同じような能力なのにルビイの方だけ妙に使い勝手良くないですかね。それともソーマの方は醜い相手、吸血鬼に限らないという点で勝っているってことでしょうかね。それでも自分の血がある限り人間やセリオン相手でもかなり戦えるルビイと比べるとだいぶ使い勝手悪いと思うんですよ。……っていうどうでもいい話でした。自身を触媒にして発火(やりすぎると自分もサファイアになる)とかだと……サファイアの火力が心配になってきますね。自己解決しました。ごめんなさい。

あと、エピソードの話。本作では個別ルートが実質的に存在しておらず、選択肢後に少しだけ会話があって、あとは別途エピソードにてえっちシーン……といった流れ(ベルカのみえっちシーンのない小シナリオあり。なんで! ほかのキャラにもあっていいでしょ!!)。エロゲとして……みたいな話は分かるけど、正直本作のシナリオ進行上一本道の方がやりやすいし、これで正解かなーって思う。でもやっぱり個別のえっちシーンないシナリオが圧倒的に不足している。特にルビイなんかは、再開してようやくお互いの進む道は交わったというところで二人の時間はあまり取れず終わり。ちょっと流石に寂しかったかな……。まぁ、それだけにルビイのキスと告白のシーンは刺さりに刺さった。愛してる……ルビイ。

……っと、私はベルカが好きだから。

関係ないけどこれってお洒落に入るんですかね。私が超絶お洒落に興味なくてかつセンスもないってだけの話ですかね。流石にそこまで自分を卑下するつもりはまったくないのですが。私にはだっさい謎の服にしか見えないよ……。あとさくレットの蓮の私服を髣髴とさせるような異常乳袋まじでやめて……。

 

 

文句ばっか言ってますが最高の作品でした。エウリュアレなんて存在していませんでした。

 

点数:92/100 文章:6/10 味:苦味、旨味

『ハミダシクリエイティブ』感想

 

 

全体の話

正直な話、私はまど作品が好きではない。漠然と、それだけの感情をもって私はハミクリをスルーした。とはいえ頭の片隅にSD絵茜屋さんだしその時点で勝ち確では? という思いは無きにしも非ず。

ところがどっこい、面白かったです(完全敗北)。

まず最初に、本作の主人公はカスだ。冒頭にて妹にせがんでソシャゲの課金をさせてもらっている姿はまさしく模範的カス……! それでいて大した能力もない。特にこれと言って好きになれる要素がない主人公だった。しかしながら私がこの主人公に明確な拒絶を示すことはなかった。というのも、この主人公は潔くカスであり、変な正当性や、「男らしさ(笑)」を主張することがまずない。

エロゲというもの、及びその畑で育ったライターはしばしば謎の「男らしさ(笑)」を主張し、無駄にヒロインを、果てはこれといった脆弱性すらも抱えていないヒロインから必要のない負担軽減を促す。こういった気持ちの悪い思想を一切抱えていない本作の主人公はそれだけで魅力を感じるには十分であった。加えて主人公、及びヒロインたちの口調についても「違和感のある口調」「変に気取った気持ち悪い口調」ではなかったことは非常に好ましい。というのも、例えば育ちがいいわけでもなく、そういった環境であるために口調が映ったとかいうこともないのになぜか「わよ」「かしら」を使うようなヒロイン、それがいなかったのだ。華乃の口調は「わよ」ではあるが、むしろこれは好意的。伝わるかわからないが、魔理沙がどこでも「だぜ」とつけても違和感がない、決定的な違和感が逆に違和感を消しているような状況。そんな感覚に近い。

上記2点により、最近には珍しく作品への怨嗟が極限まで抑えられている(まったくないというわけではないが、取り立てて話題に挙げるほどのものでもなし)。

また、全体の話としても普通に面白く──大きな区切りではなく、もっと小さな文章単位での面白さ──一部除いて読み進めることが苦ではなかった。これは個別ルートがどれも夏休みから文化祭にかけてというまったく同じものをなぞっているだけであっても飽きずに読み進められたことからも強く実感する。

 

あすみ

先ほど、作品全体としては面白いと言ったばかりだが、このルートだけはあまり面白くはなかった。内容はVtuberのヒロインの手伝いをしたりなんやかんやあって文化祭にもVtuber使います的な話なのだが、どうにも他3ルートと比較して話の勢いが弱い気がした。またストーリー自体も正直微妙だったことから、読後感含め良い感情は浮かばなかった。

 

華乃

あすみルートの次に行ったので期待が下がってきていたのだが、いい意味で裏切られた。もともと変な口調も相まって良い癖のあるキャラクターだとは思っていた。しかしそれだけでなくデレたときの破壊力も目を瞠るものがあった。またシナリオも流れはあすみルートとさして変わらぬようなものであるのに、最後まで気持ちよく読み進めることができた。

 

詩桜

ここだけの話こいつにイラっとさせられたことは十数回ある。

なのに、なのに……ああ、このタイプがデレたらえげつないことになるなんて予想できたはずなのに……。私は彼女の優位性を否定したくなかった。それを支援するかのように主人公が告白したのは本当に素晴らしかった。そして完全に相手に優位を取らせるのではなく飽く迄対等、年の差あれど互いを認め合った気持ちのいいふたりをいつまでも見つめていたい。それだけに、ラストで君のために留年したよと見たとき首をかしげた。「それは違くない????」と。ただ、それを差し引いても告白からその後の流れまで非常に私好みのシナリオだったので満足。

 

妃愛

実の兄に明かす恋心、男女の仲でありながらも決して割れることのない兄妹という関係性、そのアンバランスな安定性はとても眩しく見えた。本作のどのルートよりもありきたりで使い古されたテーマでも、このハミダシクリエイティブという作品らしい妹像というものが確かに浮かんだ状態でプレイするのは格別だった。この妹の大人らしさと幼さの併存、他のルートでは決して見せなかったそれを知った「兄」としての読者。それに心打たれるまで時間はかからなかった。

とはいえ終盤の展開はよくある「いろいろあったけど丸く収まったね」が結構無理矢理感あって好きじゃなかったです()

 

P.S. 卵のシーンだけをずっとTwitterで見ていたせいか、笑いどころなのかと勘違いしていてからの割と真剣な場面だったのでイマイチ入り込めず困惑してました。これからプレイする人いたら気をつけてね。

 

CGについてちょっと

作画的にも可愛さ的にも安定感のある絵で安心して眺めることができた。しかしその安定感が思わぬ方向に悪影響を与えていたというか、この方の絵、CGにも立ち絵の安定感がありすぎて立ち絵がそのままCGになったような印象を受けた(本来それが悪いこととなる筈はないのだが)。そのせいでCGに対してありがたみを感じることができなかった(いやほんとに絵自体はめっちゃ可愛いのです)。

 

 

 

点数:67/100 文章:5/10 味:酸味少々、塩味少々

『AMBITIOUS MISSION』感想

ひっさしぶりのサガプラ作品だーー! 

前作かけぬけ青春スパーキングは散々発売前後にネタにしたにもかかわらず直前でひよって結局買わずに今に至る。いつか、プレイしたいなぁ……(遠い目)。しかし腐ってもサガプラキッズ、意気揚々と予約して買いました。……まぁ、買った理由はさかき傘だったからってだけなんだけども。

 

 

 

全体

全体として、そういった前置きで感想を言うのが難しいタイプの作品筆頭格のシナリオを書くことで有名(当社比)なさかき傘氏。というのも、TRUEルート以外のルートにて本筋のシナリオの進行がまぁ遅い。無論TRUE以外のルートに価値がないのかと問われればそんなことはないし、それどころか前作金恋のシルヴィ然り、今作のかぐや然り、なにか決定的な存在にはなっている。しかしながらシナリオ単体として見た場合明らかにTRUEへの布石でしかなく、そういった事情を加味するどうしても全体としての面白さは下がってしまう、そんな作品。

つまるところ最終的にどうだったのか、という感情で面白さを判断するわけだが……うーーーーーん……。いや、かなり面白かったし、客観的に見て完成度も高かったと思う。でも、何か決定的に私にとって足りないものがあった、そんな感想が浮かぶ。先刻も言った通り非常に面白い作品ではあった。ではあったのだが……なんか違う。

……ので言ったん脇に置いておく。パロネタ、パロネタについての話をしたい。金恋でその悪名を世に知らしめてしまったことは数年前と言えど記憶に鮮明だ。しかし、本作にてあまり評判のよろしくなかったであろう(周囲の意見しか知らないのでもしかするとそうではない可能性もあるだろうが)パロネタをまさかパワーアップさせて入れるとは思ってもみなかった。これは勘違いだったらよいのだが、金恋のときと比べてだいぶ量増えてる……? それとも私の知見が広がってパロディをそうであると認識できる数が増えただけ……? まぁ、どちらにせよ今作のパロネタは流石に多すぎて胃もたれした。

しかしそうは言うものの、日常会話については普通に面白かった。安易な下ネタと言えばそれまでだが、エロゲというものは中高生をメインターゲットにしているらしいので、みんな大爆笑だったのです。

といった感じ。次!

 

虹夢

愚か。

ではまず、肌が少し黒めだとか、ギャルだとか、もろもろの性格だとか、そういったことの一切を抜きにして、一度上記2点の画像を凝視してほしい。かけぬけの響にも同じような感情を抱いたのだが、なんともサガプラ的苦手な顔というものを象徴している気がする。

という感情が前提にあったのを念頭において、このルートを読み進めた。これから先にどう足掻いても希望なんてなかったんだ……。実際シナリオもあんまり。ここだけの話結構読み飛ばしてしまったところがあるので深く言及することができない。まぁ、彼女の言う、数字がどうのって話には、まったく共感できなかったのでそれだけ。

 

弥栄

虹夢に比べると順当に面白くはあったと思う。クマが出てきたりなんなりしたときは「うん?」となりはしたが、脇道と考えてご愛敬。

 

かぐや

可愛い(可愛い)。まぁ、普通に良かった。

でも基本的な情報があてなルートに収束するので語るところが結構少ない気がしなくもない。

 

あてな

今まで謎だったことが次々明かされてく感覚、たまんないねぇ。特に「怪盗さん」の真実はわかりやすくも実直な種明かしとしてとても強い。

あてなとあてなを重ね、手の中にあるものを思い出す主人公、これには思わずウルっとした。

そう、そうなんだよ。「自分の手の内にあるものがなんなのか」、やはりこれが本作の主題なのだなぁ。過去編は最小限でいい。何故なら自分が今、その手にあるものを認識するための時間だから。過去は、どう足掻いても過去だから、手の内にあるというわけではないんだ。

 

というわけでなんだかんだ面白いし氏らしいメッセージも十分受け取れた。それだけあれば結局満足だった感じある。でもやっぱり何か足りない気がするんだぁ……それが何かはわからないけど!

 

P.S. 感想がなかなか思い浮かばず、投稿まで妙に時間が空いてしまった上にその影響を受けていつもより質の低い感想文な気がする……つらい。

 

点数:78/100 文章:5/10 味:旨味、塩味

エロゲの服と特殊性の話

わたしは、最近何かとソシャゲにお盛んです。きっかけは去年の3月ごろ、ふとした思い立ちでウマ娘を始めたことだった。それでも最初はどこか抵抗があったのか、好きと公言することはしなかった。でも、いつしかその境界も消えてなくなり、何食わぬ顔で2つ目のソシャゲをインストールしていた。Blue Archiveなのだが、ウマを初めて少し経った段階で絵に関しては見まくっていた。それはもう、Twitterでタグの巡回を1日に2,3回ほどしていた。そして絵を保存するたびに「流石に2つは……」と思っていたのだが、やはりそれも崩壊。終いには3つ目、シャニマスもインストールしていた。……まぁ、シャニマスに関してはウマとゲーム性が同じだと気付いた瞬間(音ゲーだと思っていた)放置したのだが。ちょっと育成ゲーム、ただでさえそんな回数やりたくないのにゲーム変えて育成……とか、生きるのつらくなりそう。

まぁそれはそれとしてだ。とどのつまり去年から今日にいたるまで、わたしはそれなりにソシャゲに触れてきた。そこでたくさんのお気に入りキャラに出会った。過去出会ってきたキャラクターすべてで無差別級好きなキャラランキングを開催してもトップ層に食い込むほどの愛着のあるキャラすらたくさんいる。

ウマだとセイウンスカイがエッグい槍が刺さって抜けないし、ルドルフが好みの属性満点盛りだし。ブルアカだとアルちゃん好き好き……。シャニだとあの、どういうシチュエーションかわからないんですが、七草にちかの長髪でひらひらの服着てるのが見た目過去最高クラスに好き……。

うへぇ……なんてにやけてたら、ある日これらのキャラクターはエロゲとは何か決定的に違うものがあるような気がした。否、エロゲのキャラクターには何か決定的に欠けているものがある気がした。思うに、それは「特殊条件下で着られる特殊な服装」だと思った。エロゲにはそれが決定的に欠けているような気がするのだ。「特殊条件下で着られる一般的な服」ならば全然ある、というかそれがメインですらある。前者の具体例としては、そもそも具体例がないので、ウマの勝負服みたいなものですとだけ。後者は、着物だとか、水着だとか、そういった日常的に着ることはないが、決して存在が珍しいというわけではない服装のことを指している。

無論エロゲにもそのヒロインのためにしたためられたドレス等、あるにはある(とはいえ簡単に分類ができている時点で後者の服になってしまうような気もするが)。しかしながらそれらは絶望的にダサいものが多い。少なくともわたしが出会ってきた作品に美しいと思える服は数えるほどしかない。

対して先に例として挙げたキャラクターは(アルちゃんの服はそうではないに片足突っ込んでる気がしなくもないが)みな、特殊でありかつ、キャラクターとマッチしており、それでいて美しい、そう心から思える服装だったのだ。思えばウマに惹かれたのは必然だったのかもしれない。勝負服という名目でキャラクター全員に特殊条件下で着られる特殊な服装が用意されているのだから。ウマでなくとも、基本的にそのキャラクター専用の服が拵えられている。うーん、ソシャゲ最高!w